オーバーフロー水槽が全てでは無い
水槽システムの最高峰と言われるオーバーフロー水槽。特にマリンアクアリウムにおいて、海水魚、珊瑚、イソギンチャクの飼育を行う際には、オーバーフロー水槽が最適とされています。しかし、マリンアクアリウムを楽しむ愛好家の中には、外掛式濾過水槽や上部濾過水槽で海水魚を飼育したり、外部濾過水槽で海水魚や珊瑚、イソギンチャクを飼育される方も沢山います。私自身も上部濾過水槽からマリンアクアリウムを開始し、その後外部濾過水槽へ切替、最終的にはオーバーフロー水槽へと切替を行っていきました。
2000年から続けてきている海水魚、珊瑚、イソギンチャク飼育の実経験を踏まえ、水槽システムの仕組みと、それぞれの水槽環境において飼育可能な生体とこれから海水魚、珊瑚、イソギンチャク飼育を開始しようとされている初心者の方を対象に、おすすめの水槽システム構成についてもあわせてご紹介させていただきます。
目次
主な飼育水槽(濾過システム)の種類について
生体の維持に欠かせない濾過システム。主な水槽の濾過システムは外部式フィルターを利用した「外掛式濾過水槽」。上部フィルターを利用した「上部濾過水槽」。外部フィルターを利用した「外部濾過水槽」。メイン水槽と濾過水槽を完全に分離して結合した「オーバーフロー水槽」の4種類に分かれます。他にも投げ込み式フィルターの水槽などもありますが、金魚やメダカ飼育がメインの濾過システムとなるため、本ページには記載していません。
外掛式濾過水槽
外掛式濾過の水槽は、濾過装置をメイン水槽の縁に設置し、モーターで吸い上げられたメイン水槽内の水が外掛式濾過槽内のウールマット、ドライボール、活性炭といった濾材を通過して、浄化された水がメイン水槽内へと戻っていく水槽システムです。
外掛式濾過水槽で飼育できる生体
外掛け式フィルターを利用した濾過システムの場合、濾過効率が低いため、水を汚しやすいイソギンチャクや、水質に敏感な珊瑚の飼育は避けた方が無難です。海水魚の飼育であれば、小型のハゼや、カクレクマノミのみの飼育であればなんとか飼育は可能です。珊瑚もディスクコーラルであれば、蛍光灯での飼育も容易なため外部式濾過水槽でも飼育が可能です。ただし海水魚への餌の与えすぎなどにより、水質は直ぐに悪化してしまうので、頻繁な水替えが必要となってきます。ディスクコーラルが入った水槽で、海水魚を単独、もしくは2匹ぐらいの飼育に抑えるべき水槽システムです。
上部濾過水槽
上部濾過水槽は、水槽上部に配置したポンプで汚れたメイン水槽内の水を吸い上げ(赤い矢印)、上部に設置した濾過槽内を水が通過することで水槽内の汚れを取り除き、濾過された水(青い矢印)が再びメイン水槽内に戻る循環を行う水槽システムです。
上部濾過水槽で飼育できる生体
上部濾過水槽では、イソギンチャクの飼育も可能です。私は過去、ハマクマノミとタマイタダキイソギンチャクを上部濾過水槽で年単位で飼育していた経験があります。ただし、外掛け式フィルターよりは上部フィルターの方が濾過効率はよいですが、濾過能力には限界があるので、水槽内への生体の入れすぎには気を付けた方が無難です。45センチサイズ水槽であれば、イソギンチャク一匹、海水魚は2匹ぐらいが安定して飼育できるレベルだと思います。また定期的な水替えも必要となります。
外部濾過水槽
外部濾過水槽は、ポンプを内蔵した外部濾過フィルターがメイン水槽の汚れた水を吸い取り(赤い矢印)、外部濾過槽内を通過することで、水槽内の汚れが取り除かれた水(青い矢印)が再びメイン水槽へと戻っていく循環を繰り返す水槽システムです。
外部濾過水槽で飼育できる生体
外部式フィルターであれば、海水魚、珊瑚、イソギンチャクなど大体の生体を維持する事ができます。珊瑚はソフトコーラルはもちろんの事、ミドリイシなどSPSの飼育を外部濾過水槽で行っている方も私の知り合いのアクアリストにはいます。ただし、外部フィルターの場合は、プロテインスキマーをメイン水槽内に設置する必要が出てくるため、小型のプロテインスキマーしか設置することができません。でも、アクアリストの中には、LPSやSPS、ハタゴイソギンチャクを状態よく外部濾過水槽で長期飼育される方がいます。
オーバーフロー水槽
オーバーフロー水槽は、メイン水槽下部に設置された濾過槽内で浄化された水がポンプによってメイン水槽に持ち上げられ(青い矢印)、溢れたメイン水槽内の汚れた水が、フロー管を伝わり濾過槽に落ちる(赤い矢印)水槽システムです。
オーバーフロー水槽で飼育できる生体
オーバーフロー水槽は、海水魚、珊瑚、イソギンチャク飼育に最も適した水槽システムです。より安定した環境で、長期間生体を維持していきたいと思う場合は、オーバーフロー水槽を選択した方が無難です。オーバーフロー水槽のサイズにもよりますが、オーバーフロー水槽ではほぼ全ての生体が維持しやすいシステムです。
生体飼育において必要な機材について
海水魚飼育において必要な機材
外掛式濾過水槽の場合
海水魚の飼育がメインとなってくる環境のため、メイン水槽、外掛けフィルター、プロテインスキーマー、クーラー、ヒーター、LEDがあれば生体の維持が可能です。外掛けフィルターの場合、水質が悪化しやすいので、定期的な水替えが必要となります。また、水替え時において、生体は急激な環境にストレスを受けてしまう可能性があるため、水替え後に生体をメイン水槽内に戻す際には、温度合わせ、水質あわせが必須となりますのでご注意ください。外掛式濾過水槽の場合は、外掛けフィルターとプロテインスキーマーがセットになったカミハタ海道河童フィルターがおすすめです。
外部フィルター&プロテインスキマー
カミハタ海道河童フィルター(小)に適した水槽
カミハタ海道河童フィルター(小)は、単品使用時の適合水量が30リットル以下で、装着可能な水槽の縁が4~18mm。装着可能な水槽の高さが20cm以上となりますので以下の水槽がおすすめです。
カミハタ海道河童フィルター(大)に適した水槽
カミハタ海道河童フィルター(大)は、単品使用時の適合水量が60リットル以下で、装着可能な水槽の縁が5~22mm。装着可能な水槽の高さが25cm以上となりますので以下の水槽がおすすめです。
小型クーラー&ヒーター ゼンスイ TEGARU テガル
小型クーラー用水中ポンプ
ゼンスイ TEGARU テガルの適合循環流量:約1.5~8.5リットル/分となっているので、これに適したポンプとして、マキシジェット マイクロ6.6リットル/分がおすすめです。

テガルとポンプの接続イメージ
照明(LED)
小型水槽の場合、メタハラの設置が難しいのためLEDの選択となります。
上部濾過水槽の場合
上部濾過水槽の場合、海水魚飼育がメインとなってくる環境のため、必要な機材については、メイン水槽、上部濾過フィルター、マメスキマー、クーラー、ヒーター、LEDが生体維持にかかせないアイテムとなります。また、上部フィルターを選定する際には、海水に対応しているか?も重要なポイントとなります。
海水に対応したGEXデュアルクリーンフリー淡水・海水両用上部フィルター
水槽
GEXデュアルクリーンフリー淡水・海水両用上部フィルターは、45cm~60cmサイズの水槽に対応しています。
小型クーラー&ヒーター ゼンスイ TEGARU テガル
小型クーラー用水中ポンプ
ゼンスイ TEGARU テガルの適合循環流量は、約1.5~8.5リットル/分となっているので、これに適したポンプとして、マキシジェット マイクロ6.6リットル/分がおすすめです。

テガルとポンプの接続イメージ
照明(LED)
上部濾過フィルターの場合、水槽上部がフィルターで半分占有されてしまうことから、空いた半分のスペースに設置できる照明を選定する必要があります。
プロテインスキマー
プロテインスキマーは無くても生体の維持はできますが、設置した方が生体を安定して維持することができます。小型水槽におすすめプロテインスキマーは、マメスキマーになります。
外部濾過水槽の場合
外部濾過水槽の場合は、海水魚、珊瑚、イソギンチャクの飼育が可能です。器材としては、メイン水槽、外部フィルター、マメスキーマ―、クーラー、ヒーターが必要です。ハタゴイソギンチャクや、SPSを飼育する場合は、メタハラが必要となってきます。
外部フィルターの場合は、クーラーもセットになったチャームの便利で格安なスターターセットがおすすめです。スターターセットの照明はLEDとなっています。
オーバーフロー水槽の場合
オーバーフロー水槽の場合は、メイン水槽とサンプ(濾過槽)が分離しているため、水量を多く確保することができ、海水魚、珊瑚、イソギンチャク飼育に最も適した水槽システムとされています。私も実際に海水魚、珊瑚、イソギンチャク飼育はオーバーフロー水槽を長年利用しています。
以下では、初心者の方を対象に、まずはお手軽にオーバーフロー水槽を開始したい方を対象にしたおすすめのシステムと、初心者だけどいきなり本格的に開始をしたいとお考えの方におすすめのオーバーフロー水槽セットをご紹介させていただきます。
以下でご紹介するオーバーフロー水槽セットは、クーラーが初めからセットされているため、クーラーの選定に悩む必要が無いおすすめのオーバーフロー水槽セットとなります。
まずはお手軽にオーバーフロー水槽を始めたい方
初心者の方でオーバーフロー水槽を始めたい方は、チャームのクロミスシリーズがおすすめです。必要な器材が全て揃っているので、本格的なマリンアクアリウムをオーバーフロー水槽が届いたその日から楽しむことができます。
照明(LED)
チャームのクロミスシリーズのセット内容を確認すると、照明が含まれていません。アクアリウム専用のLEDを別途購入する必要があります。
照明(メタハラ)
ハタゴイソギンチャクや珊瑚(特にミドリイシ)の飼育を行う事を想定されている方は、LEDでは無くメタハラを別途購入した方がおすすめです。カクレクマノミとハタゴイソギンチャクの共生を楽しむのであれば、20000Kのメタハラがおすすめです。
クロミス60スタンダード+ZR-miniセット内容
オーバーフロー水槽セット クロミス60 スタンダード+ZR-miniセット | |
---|---|
オーバーフロー水槽セット・クロミス60 |
サイズ600×300×360mm(幅×奥行×高さ) サイズ605×305×700mm サイズ450×300×300mm サイズ290×120×150mm |
クーラーゼンスイ ZR-mini |
|
ポンプRio+(リオプラス)1100 |
※サンプにポンプを入れてクーラー、水槽の順に接続します。 |
専用ホース 3m(16/22φ) | 設置場所に応じてお好みの長さに切断してお使いください。 パイプに接続しづらい場合はホースをお湯につけて柔らかくすると入りやすくなります。 |
ホースバンド LL 19~25mm 2個 | 塩ビパイプ及びポンプとの接続部を固定します。 |
本格的にオーバーフロー水槽を始めたい方
はじめから本格的に海水魚、珊瑚、イソギンチャクの飼育を行いたい方は、レッドシーマックスのオーバーフロー水槽セットがおすすめです。必要な器材等が全てオーバーフロー水槽システムの中に内臓されているため、スタイリッシュでお部屋のインテリアとしても最適です。
また、チャームのクロミスシリーズと異なり、キャビネットに扉が付いているため、オーバーフロー水槽で気になる水の音の対策が施されています。初心者の方でも本格的に、海水魚、珊瑚、イソギンチャク飼育が開始できるオーバーフロー水槽セットです。
レッドシーマックスのオーバーフロー水槽セットには、珊瑚飼育に適した照明(Hydra26 HD LED)もセットに含まれています。まさにオールインワンパッケージのオーバーフロー水槽です。
レッドシーマックスE-170セット内容
レッドシーマックスE-170 海水用水槽セット | |
---|---|
対象 | 海水魚、サンゴ |
特長 |
|
数量 | 1台(飼育に必要な器具が全て揃ったフルセットです。) |
仕様 | サーフェススキマー:ビルトインサーフェススキマー プロテインスキマー:MSK900 ・流水量:900L/h、エア流入量250L/h クーラー対応パイプ径:内径16mm |
サイズ(約) | 外寸:幅60×奥行き57.5×高さ142cm(LED照明含む) 水槽サイズ:幅60×奥行き57.5×高さ55cm 総水量:170L 飼育水量:140L リアサンプ水量:30L 水槽ガラス厚:12mm |
重量(約) | 総重量:100kg 水槽単体:50kg セット時重量:270kg以上 |
ご注意 |
※本製品はガラス製品ですので取り扱いには十分ご注意ください。万一割れやヒビを発見された場合には使用しないでください。 ※本製品は海水生物専用となっておりますので、淡水生物の飼育には適しておりません。 ※必ず室内でご使用ください。また、電化製品付近でのご使用はおやめください 。 |
TECO アクアリウム用クーラー TK500 | |
最大対応水量 | 約 500L ※最大対応水量は気温、設置場所、飼育器材などで下がります。 500LLは水温25℃、室温30℃、加熱負荷0.5W/Lの場合を想定しています。 |
特長 |
|
数量 | 1台(専用ヒーター、スクイーズチューブクランプ、ホース継手、固定用クリップ、レンチ付属) |
仕様 | 定格電圧/周波数:AC100V 50/60Hz 定格消費電力(冷却時):160W/200W 定格消費電力(加温時):400W/400W 適合ホース内径:16mm 適合最小流量:400L/h 適合最大流量:2500L/h 最大水圧:1bar 水温設定範囲:5~35℃ 成績係数(COP):2 ガスの種類:R134a(地球温暖化係数 1300) |
サイズ(約) | 幅31×奥行31×高さ41.6cm 電源コード長:1.5m |
重量(約) | 16.5kg |
生産国 | イタリア |
ご注意 | ※本品は鑑賞魚水槽用クーラーです。目的以外の用途では使用しないでください。 |
まとめ
オーバーフロー水槽は安定した環境で楽に生体を維持できるといった特徴があります。それに対して、外掛け式フィルター、上部フィルター、外部フィルターの場合は、設置できる器材が限られてきてしまうため、オーバーフロー水槽と比較すると、安定した水槽環境を維持することが難しくなってきてしまいます。
ただし、飼育する生体を海水魚のみにするなど、限られた生体におさえれば、オーバーフロー水槽でなくても生体の維持は可能です。実際私の周りにも外部フィルターで長年、海水魚や珊瑚、イソギンチャクの飼育をしているアクアリストがいます。
以上、オーバーフロー水槽以外の水槽および、各水槽システムで維持できる可能性がある生体について、ご紹介をさせていただきました。
商品に関する質問やお問合せ等については、直接チャーム本店までお問合せください。
初心者向けオーバーフロー水槽、外部濾過水槽
海水魚、珊瑚、イソギンチャクの飼育は、海の中の生き物である事から、どの生体も飼育する事はできたとしても、長期飼育する事が難しく、初心者向けのオーバーフロー水槽、外部濾過水槽としてご紹介してしまってよいのか、愛好家の立場で悩ましいところであるのですが、海の中の生物を家庭の水槽で飼育してみたいと思う方のために、初心者向けの水槽としてご紹介させていただきます。詳細は以下のページでまとめています。
オーバーフロー水槽のメリット、デメリット
海水魚、珊瑚、イソギンチャク飼育に最適とされるオーバーフロー水槽ですが、メリットもあれば、デメリットもあります。オーバーフロー水槽には、様々な商品がありますが、厳密には同じオーバーフロー水槽であっても、各製品ごとにメリット、デメリットもあります。本ページでは、オーバーフロー水槽全般におけるメリットとデメリットについてまとめていきたいと思います。
オーバーフロー水槽比較
海水魚、珊瑚、イソギンチャク飼育を行う上でおすすめなオーバーフロー水槽を一覧で、比較しやすいように以下のページでまとめています。
マリンアクアリウム飼育方法
海水魚、珊瑚(ソフトコーラル、ハードコーラル)、イソギンチャク、マリンプランツ(海藻、海草)の飼育方法について、以下のページでそれぞれまとめています。
マリンアクアリウム飼育機材
海水魚、珊瑚(ソフトコーラル、ハードコーラル)、イソギンチャク、マリンプランツ(海藻、海草)の飼育に必要な機材や用品などについて、以下のページでそれぞれまとめています。