マメスナギンチャクの長期飼育について
コレクション性が非常に高いソフトコーラルのマメスナギンチャク。強い光を必要とせず、LED、蛍光灯といった照明でも飼育が可能な事から、アクアリウムを始めたばかりの初心者にも人気のサンゴです。落ち着いた飼育環境下においては、増殖もし易く色鮮やかな個体が多いのも魅力の一つです。私はフィジー産のマメスナギンチャクが特に大好きで、水槽で増殖させながら、年単位での長期飼育を実現させています。
目次
マメスナギンチャクについて
英語、学名
マメスナギンチャクの学名は、”Zoantharia”です。海外のアクアリストたちと交流しているとマメスナギンチャクの事をみな、Zoaと呼んでいます。Zoanthus WYSIWYGなどと表現されることもあります。IT関係者だとWYSIWYGは、WYSIWYGエディタとして馴染みのある言葉ですね。コレクション性が高いことから、海外の愛好家にもとても人気の高いソフトコーラルです。国内は、とても情報が乏しいため、私は海外のアクアリストとしか交流しなくなってしまいました。
種類
マメスナギンチャクの仲間は、以下のように分類されます。一見同じようなマメスナギンチャクにも様々な種類があります。実際に育てている方には違いが判るかと思いますが、例えば分かりやすい例だと、オーストラリアに生息するマメスナギンチャクの仲間には、ポリプの触手が通常のマメスナと比較すると長い個体などがいたりします。
- Zoanthus alderi
- Zoanthus barnardi
- Zoanthus cavernarum
- Zoanthus chierchiae
- Zoanthus coppingeri
- Zoanthus cyanoides
- Zoanthus erythrochlora
- Zoanthus mantoni
- Zoanthus natalensis
- Zoanthus nymphaeus
- Zoanthus pacificus
- Zoanthus pigmentatus
- Zoanthus praelongus
- Zoanthus pulchellus
- Zoanthus robustus
- Zoanthus sinensis
- Zoanthus sociatus
- Zoanthus solanderi
- Zoanthus stuhlmanni
- Zoanthus vietnamensis
- Zoanthus xishaensis
- Zoanthus zansibaricus
産地
マメスナギンチャクの主な産地は以下のようになります。
沖縄産
沖縄産のマメスナギンチャクは、一昔前はピンクの個体が人気でしたが、現在は洋物が沢山流通するようになり、沖縄産のマメスナギンチャクを好む方はあまりみかけなくなってきました。
フィジー産
私はフィジー産がとても大好きです。他の産地と比較するとパステル調の色合いが強く、水槽内を明るく彩豊かにしてくれます。
バリ産
バリ産はなんとなくベトナム産に近い個体が多い気がします。緑、赤など色合いがはっきりした個体が多いのが特徴です。
ベトナム産
ベトナム産はバリ産に近い個体が多いです。バリ産と同じく、緑、赤など色合いがはっきりした個体が多いのが特徴です。
オーストラリア産
あまり流通しないオーストラリア産。私は過去一度だけオージーマメスナを飼育した事があります。ポリプの長い触手が特徴的で水流でフサフサ揺れるポリプが目視で確認できるほど、ポリプの触手が長いのが特徴です。
チャイナ(台湾)産
チャイナ産も人気のマメスナですね。15年ぐらい前は、人気のマメスナギンチャクと言えば、フィジー産だったのですが、カラフルな色合いでコレクション性も高い事から、チャイナ産マメスナをコレクションする人が多くいます。
USAブリード個体
USAブリード個体も大好きなマメスナです。私は特にレゲエマニアでもあることから、USAブリードといえば、Rasta Zoasにしか興味がありません。他のマメスナと比較して、2ポリプのフラグ販売で数万する価格の高いマメスナである点も特徴的です。
飼育方法
マメスナギンチャクは、ソフトコーラルの仲間で飼育も簡単な事から初心者にも人気のサンゴです。
餌
私はソフトコーラルには餌は与えません。浄水器、人工海水で生成した飼育水と、LEDや蛍光灯など照明を照らしてあげれば、成長もしますし増殖も行います。餌を与える前に、飼育水の中に濃度の高い硝酸塩や亜硝酸塩が発生していないか確認する方が先決です。特に海水魚を一緒に飼育している場合は、硝酸塩や亜硝酸塩濃度が上昇しやすいため、注意が必要です。
毒性
毒性はまったく強くありません。逆に他のサンゴの方が毒性が強いので、同じマメスナ同士の接触であれば問題無いですが、ソフトコーラルであっても他の種類のサンゴとの接触は極力避けた方が無難です。ソフトコーラルで毒性が強いか弱いかの見分け方は、サンゴに触れた際に、ヌルヌルヌメリが強い個体は毒性が強いです。トサカの仲間の中には毒性が強い個体がいるので注意が必要です。逆に毒性が弱いツツウミヅタや、ウミアザミといった種類との接触については問題がありません。マメスナギンチャクの間からウミアザミや他のサンゴが発生するといったことも水槽内で発生することがあります。
移動
マメスナギンチャクは移動はしません。ただし水槽環境下の条件が生体にあうとどんどん増殖をしていきます。増殖したマメスナギンチャクは、水槽内に自然な風景を作り出し、水槽内がとても華やかで鮮やかになっていきます。
増殖
マメスナギンチャクは増殖をとてもします。購入時は、ライブロックに少ししか付いていなかったマメスナギンチャクが一年後には、水槽内を覆い尽くすほどに成長する事もあります。増殖の前に、マメスナギンチャクの開きが悪い場合は、水槽内の水質をチェックすることをおすすめいたします。
株分け
マメスナは容易に株分けし、フラグ化させることができます。コレクション性が高いサンゴでもあることから、家庭の水槽内で増殖したマメスナギンチャクを株分けし、オークションで販売する人もいます。
ポリプから出る糸
特に水替えを行った後などにマメスナギンチャクから白い糸のようなものが出る事がありますが、飼育上は特に問題はありません。ただし、水替え時などにおいて急激な水質の変化が発生すると、マメスナが状態を崩してしまうことがあるので、水温管理、塩分濃度管理、水質管理には注意が必要です。これはマメスナギンチャクに限らず、他のどのような生体を維持するにあたっても同様の事がいえます。
相性
イソギンチャクとの相性
イソギンチャクとマメスナを比較した場合、イソギンチャクの方が毒性が強いことの方がほとんどです。マメスナギンチャクは水槽内を移動しませんが、イソギンチャクは水槽内を移動します。水槽内を移動したイソギンチャクの触手がマメスナギンチャクに触れてしまい、マメスナギンチャクのポリプが開かなくなってしまうといった事態も発生するので、イソギンチャクとの共生には注意が必要です。
ウミウシ
ウミウシの仲間には、サンゴを食べてしまう種類がいます。得意サンゴに擬態するウミウシには注意が必要です。私は飼育環境下において、マメスナギンチャクをウミウシに食べられてしまった経験はないのですが、特に同じソフトコーラルの仲間であるブルームウミアザミなどは、ウミウシに食べられ易いので注意が必要です。
エビ
スカンクシュリンプ、ホワイトソックスといったエビとの相性は問題ありませんが、キャメルシュリンプは注意が必要です。ソフトコーラルに限らず、LPSやSPSのポリプを啄んでしまうことがあるので、キャメルシュリンプを水槽内に入れるのは避けた方がよいです。
カクレクマノミとの相性について
カクレクマノミとの相性は特に問題がありません。ただし、水槽内にイソギンチャクが存在しない場合は、カクレクマノミがマメスナギンチャクのポリプに体を摺り寄せる場合があります。カクレクマノミがマメスナギンチャクに体を摺り寄せると、マメスナギンチャクのポリプが開かなくなってしまいますので、イソギンチャクが存在しない水槽環境下で、マメスナギンチャクとカクレクマノミの飼育を行う場合は注意が必要です。
貝
マメスナに限らず貝の仲間にはソフトコーラルを食べてしまう種類がいます。水槽内で貝を飼育する際には、サンゴを食さないことが確実に分かるシッタカやマガキガイといった貝を苔採り用に飼育するのがおすすめです。
ヤドカリ
ヤドカリはマメスナを食べることはありません。ただしマメスナの上をヤドカリが通過するとポリプを閉じてしまいますので、あまり大量のヤドカリをマメスナギンチャクがいる水槽内で飼育する際には注意が必要です。もし水槽内でヤドカリを飼育する場合は、個体数を少なくしたり、ベントス性の小型のヤドカリを飼育するのがおすすめです。
ヤッコ
マメスナはヤッコとの相性が悪いという記載をよく見かけるのですが、全然問題無いです。我が家のマメスナ水槽ではバヌアツ産のシマヤッコを飼育していますが、問題無くマメスナは増殖を繰り返しています。シマヤッコもマメスナギンチャクも共に年単位で飼育しています。
活着、固定方法、接着剤
ショップで販売されているマメスナギンチャクの多くが、既にライブロックやフラグに活着しているため、特に購入時にマメスナの活着や固定方法について気にする必要は無いと思います。もしも増殖したマメスナを株分けしてフラグ化する場合は、サンゴ専用の接着剤を利用するのがおすすめです。私の知り合いのアクアリストには、アロンアルファで活着固定している人もいますが、サンゴ専用の接着剤を利用するのがおすすめです。
付着したコケの駆除
稀にマメスナギンチャクに苔が発生してしまう場合があります。ブラシなどでこすってしまうとマメスナギンチャク自体に傷が付いてしまうため、指で優しくなでるように駆除するのがおすすめです。タツナミガイやエメラルドグリーンクラブなどの生物兵器を利用するといった手段もありますが、マメスナに付いたコケを食べてくれる保障はありません。
おすすめのライブロックについて
マメスナギンチャクの飼育におすすめなライブロックは、スプラッシュの枝状ライブロックです。ライブロック自体に沢山の隙間があることからマメスナギンチャクをライブロックに固定しやすいのが特徴です。
硝酸塩濃度による影響
水槽内の硝酸塩濃度や亜硝酸塩濃度が高くなると、マメスナギンチャクに限らず様々な生体が調子を崩してしまいます。水道水をそのまま利用すると、水道水自体に硝酸塩や亜硝酸塩が含まれていますので、水替え時には浄水器を利用して純水から人工海水で飼育水を作るのがもっとも適しています。
照明
マメスナギンチャクはLED、蛍光灯といった照明でも飼育することができるソフトコーラルです。メタハラなどの照明でも飼育する事ができます。
水流
水流は強くなくても飼育は可能です。注意しなくてはならないのは、パワーヘッドなどの水中ポンプを利用してマメスナを飼育する際には、パワーポンプの水中が直接マメスナギンチャクを直撃しないように配置してあげる必要があります。
水質
水質の変化には強いソフトコーラルではありますが、急激な硝酸塩、亜硝酸塩濃度の上昇によってポリプが開かなくなってしまうことがあります。定期的な水質チェックで、飼育水が汚れているようであれば、水替えをしてあげる必要があります。
病気によって溶ける?
マメスナギンチャクは、溶けるというよりも消滅して無くなってしまうといった印象が強いです。元気だったマメスナギンチャクが全然ポリプを開かなくなると、やがて消滅してしまいライブロックの肌がむき出しになってしまいます。
マメスナギンチャクの色
マメスナギンチャクには様々なカラーバリエーションがあります。ブルーのLEDライトを利用して照らしてあげれば、とっても綺麗なレイアウト水槽を実現させることができます。
赤い個体
赤い個体は、チャイナ産、ベトナム産、フィジー産で多く見受けれる個体です。
オレンジの個体
オレンジ色の個体はチャイナ産、フィジー産で多く見受けられる個体です。
黄色い個体
黄色い個体は、フィジー産、チャイナ産、インドネシア産で見受けられる個体です。
青い(ブルー)個体
ブルーの個体はインドネシア産やUSAブリード個体に多く見受けられる個体です。
色揚げ
浄水器で純度が高い純水を生成し、塩分濃度をシッカリと正しく計測し、水槽の水質に急激な変化がでないよう維持していれば、LED、蛍光灯環境下であっても、十分綺麗にマメスナギンチャクを色あげることが可能です。
色落ち
状態を落としたマメスナギンチャクはポリプの色がくすんでしまうことがあります。浄水器を利用した定期的な水替えで水質を維持してあげるのがおすすめです。
飼育難易度
マメスナギンチャクは、飼育難易度が簡単と記載されている場合がありますが、数年単位での飼育はとても難しいサンゴです。数年単位での飼育を行うためには、シッカリとした飼育環境を整える必要があります。
難易度
普通:
光量
普通:
毒性
弱い:
飼育環境
水換え頻度
飼育する水槽環境によって、水換えを行う頻度が異なってきます。水換え頻度については、以下のページでまとめています。
水換え頻度について
ライブロック
ライブロックは、水槽内での生物濾過を実現したり、珊瑚のレイアウトとして便利なため、水槽内にあった方がおすすめです。
ライブロックの特徴、選定
ライブサンド
ライブサンドは、水槽内での生物濾過を実現し、生体が水槽内で過ごし易い環境を作り上げることができます。ライブサンドの特徴や、水槽サイズ別に必要となるライブサンドの量について、以下のページでまとめています。
ライブロックの特徴、選定
プロテインスキマーの設置
プロテインスキマーは、ライブロック、ライブサンドで実現する生物濾過とは異なり、水槽内に溜まった目に見えるぐらいの汚れを物理的に除去するといった役割を持つため、設置した方が状態よく飼育することができます。
プロテインスキマーの特徴、選定
浄水器の設置
より海に近い環境で長期飼育を目指す場合には、水道水の不純物を取り除ける浄水器を設置するのがおすすめです。浄水器の特徴や選定については、以下のページでまとめています。
浄水器の特徴、選定
オーバーフロー水槽での飼育
水槽の水量が多いほど、急激な水槽内の環境変化から生体をまもり、状態よく飼育することができます。生体の長期飼育を目指すなら、オーバーフロー水槽での飼育がおすすめです。
オーバーフロー水槽の特徴、選定
マメスナギンチャクは、飼育しやすいソフトコーラルなので、外掛け濾過、上部濾過、外部濾過、オーバーフロー水槽どのような水槽であっても飼育することができます。ただし、安定した水量と水質で維持した方がマメスナギンチャクの調子は良いので、オーバーフロー水槽で維持するのがおすすめです。マメスナギンチャクを飼育する上で必要な飼育環境については、以下のページにまとめています。
実際の飼育環境
本ページで記載している記事は、以下の水槽スペックで実際に飼育した経験を元に記載しています。飼育環境を選定する際の参考情報としてください。
価格
産地によってマメスナギンチャクには価格に開きがあります。また、入荷状況等によって価格は変動しますので、あくまで参考の目安にしていただければと思います。
- インドネシア産:5,000円前後
- ベトナム産:5,000円前後
- チャイナ産:1万円前後
- フィジー産:1万円前後
- オーストラリア産:1万円前後
- USAブリード:2万円前後
詳しくは以下の通販サイトより、最新の価格をご確認ください。
通販
通販サイトで購入ができる価格が安いマメスナギンチャクを以下のページからご確認いただけます。該当の商品が存在しない場合は、商品が何も表示されない場合や、他の商品が表示される場合があります。
マメスナギンチャクのご紹介は以上となります。マメスナギンチャクの仲間のソフトコーラルの飼育方法に関するご紹介は以上となります。
ソフトコーラル、ハードコーラルに関する珊瑚の飼育方法については、以下のページでご紹介しています。
次にハードコーラルの仲間のハナガタサンゴの飼育方法についてご紹介いたします。 関連記事:ハナガタサンゴの飼育について
人気のショップ
ソフトコーラルの飼育
ソフトコーラルは、ハードコーラルと比較すると、初心者でも飼育しやすい種類が多い珊瑚の仲間です。毒性が弱い珊瑚が多いので、水槽内での珊瑚のレイアウトも容易にできます。ただし、逆に毒性が弱い分、毒性が強いハードコーラルの仲間やイソギンチャクの仲間がソフトコーラルに接触すると、ソフトコーラルがダメージを受けて溶けて消滅してしまうということがあります。水質が落ち着いた水槽を用意し、レイアウトを頻繁に変えるようなことがなければ、年単位での飼育にも望める種類も多いです。以下のページでは、ソフトコーラルの種類別に飼育方法についてご紹介していきます。
珊瑚の飼育機材、用品
珊瑚は、ソフトコーラルとハードコーラルの2種類に大きく分かれます。更にハードコーラルは、ポリプが短いSPS(Small Polyp Stony)とポリプが長いLPS(Large Polyp Stony)に分類されます。SPSの代表的な珊瑚がミドリイシとなります。珊瑚は、海水魚よりもデリケートな固体が多いので、急激な環境変化にストレスを受けて死んでしまうケースが多くあります。珊瑚を飼育する場合には、生体が落ち着ける環境を作り、一旦レイアウトを行ったら、いじらないことがとても大切だったりもします。
珊瑚飼育におすすめのオーバーフロー水槽
珊瑚飼育におすすめなオーバーフロー水槽を30センチ、45センチ、60センチ、90センチ、120センチサイズ別に比較することができます。オーバーフロー水槽は、サイズが大きくなるにつれて、とても高額になってきます。オーバーフロー水槽が崩壊したり、水槽に付属する機材が故障すると、飼育している海水魚、珊瑚、イソギンチャク、マリンプランツが死んでしまう可能性があるので、万が一何かトラブルが発生した際にも、サポート体制がシッカリとしている店舗で購入するのがおすすめです。インターネット通販で販売されているオーバーフロー水槽は、組み立てが簡単なので、届いたその日に水槽のセッティングを開始することができます。詳細は、以下のページでまとめています。
マリンアクアリウム飼育方法
海水魚、珊瑚(ソフトコーラル、ハードコーラル)、イソギンチャク、マリンプランツ(海藻、海草)の飼育方法について、以下のページでそれぞれまとめています。
マリンアクアリウム飼育機材
海水魚、珊瑚(ソフトコーラル、ハードコーラル)、イソギンチャク、マリンプランツ(海藻、海草)の飼育に必要な機材や用品などについて、以下のページでそれぞれまとめています。