ナガレハナサンゴの飼育について

スプラッシュで購入したスーパーメタリックなインドネシア便ブリード個体のナガレハナサンゴ
海外のアクアリストたちと交流していると、ハンマーコーラルの愛称で親しまれているナガレハナサンゴ。ユラユラ系サンゴの代表でもあります。グリーンタイプが一般的ですが、軸グリーン、スーパーグリーン、イエロー、ゴールド、オレンジといったカラーバリエーションが豊富なハードコーラル、LPSの仲間です。バリエーションも多く、愛好家に人気のサンゴです。
目次
ナガレハナサンゴについて

色上がりが楽しみなパープル色のナガレハナサンゴ
英語、学名
ナガレハナサンゴの学名は、”Euphyllia ancora”です。海外のアクアリストの間では、ハンマーコーラルの愛称で親しまれています。
分類
ナガレハナサンゴは、チョウジガイ科に分類されるハードコーラルの仲間です。チョウジガイ科に分類されるサンゴの仲間には、タコアシサンゴ(コエダナガレハナサンゴ)、海外ではゴールドトーチと呼ばれるツツマルサンゴ(ハナサンゴ)などといったマリンアクアリストに馴染みのあるサンゴが含まれています。
特徴
ナガレハナサンゴの特徴と言えばポリプの形状。チョウジガイ科のユラユラ水流にポリプを揺らすサンゴの仲間の中で、ナガレハナサンゴはポリプがハンマー状なのが最も大きな特徴です。
飼育方法

メタリックイエローなナガレハナサンゴ
ナガレハナサンゴは、順調に飼育できているかなっと思った矢先に、ポリプが溶け出すブラウンジェリーといった現象に突然遭遇する以外と長期飼育が難しいサンゴの仲間です。
色揚げ
ナガレハナサンゴで色揚げと言えば、グリーンでは無くイエローやオレンジ個体ですね。イエローやオレンジの個体を長期飼育していると、色味が深まり、やがてゴールドのような色合いになります。初心者の方が見ると、一見ノーマルな味気ないブラウン個体が、実はマニア側では色上がりを探る人気個体であったりもします。適切な飼育環境下で長期飼育していれば、自然と色上がり、とっても魅力ある色合いへと変化していきます。
色抜け
海水魚やサンゴ、イソギンチャクについても言える事だと思いますが、色抜けや色褪せといった現象は照明の光の悪さよりも、水質の悪さの方が影響しているような気が私は飼育していて感じます。水質が安定しているようであれば、長期水替えを行っていない水槽でも色抜けする事はありませんが、水質が悪化した水槽下で飼育を行っていると、色抜けしてくる可能性があります。
株分け
ナガレハナサンゴは水槽環境下においても株分けしながら成長していく事が確認できます。特にブランチタイプのナガレハナサンゴを飼育しているとよく分かるのですが、レイアウト変更など行わず、一度固定した位置から移動させない状態で長期間飼育しているとポリプの広がりが大きくなり、気が付いたら株が増えていたという事が過去に何度もありました。
光量
ナガレハナサンゴは、あまり強い光が必要ないとされがちですが、私の飼育経験上は、メタハラを使用した方が長期飼育する事ができ、特にイエロー、ブラウンといった個体は、メタハラ飼育の方がオレンジやゴールドに色上がる事が多かったです。ただし、中にはLEDの多灯でナガレハナサンゴを長期飼育している人もいます。
照明
ナガレハナサンゴはLEDやT5蛍光灯などでも飼育が可能ですが、長期飼育を目指す場合はメタハラを併用した方がおすすめです。こちらはスプラッシュのLPS販売、飼育水槽です。チョウジガイ系のサンゴは、メタハラとLEDを併用設置して飼育されています。

スプラッシュでナガレハナサンゴを販売している水槽
水流
どのサンゴも(イソギンチャクも)そうですが、水流は強い、弱いでは無く、適度にあるのがおすすめです。水槽サイズ規定値のパワーヘッドを選定し、パワーヘッドの水流が生体に直撃しないように、水槽全体に水の流れが生まれるような配置にするのがコツです。
定着、活着
ナガレハナサンゴは、ブロック状のライブロックだと、転がって共肉が剥がれ、溶けだし、やがてブラウンジェリー状態になってしまう事がよくあります。ライブロックを選定する際には、スプラッシュで販売されているような枝状でも入り組んだ形状のライブロックを利用すると、ナガレハナサンゴが固定しやすくおすすめです。
餌、給餌
ナガレハナサンゴは特に給餌する必要はありません。照明のみの環境下でも、十分成長してくれます。
生餌
生餌についても与える必要はありません。
共肉の剥がれ
共肉の剥がれが生じやすいのはレイアウト変更を行った後や、ライブロックから転げ落ちてしまったタイミングです。ライブロックから転げ落ちないようシッカリと固定してあげる必要があります。
ブラウンジェリー
ブラウンジェリーとは、共肉(ポリプ)が溶けだし、茶色のドロドロしたゼリー状態になってしまう事を言います。ナガレハナサンゴに限らず、チョウジガイ科のサンゴは、突然ブラウンジェリー状態になってしまう事がよくあります。一度ブラウンジェリーを発症してしまうと、復活させる事はできず、やがて骨格がむき出しの状態となってしまいます。
カルシウムリアクターの必要性について
ハードコーラルの飼育においては、カルシウムリアクターを設置した方が状態よく維持する事ができます。無くても飼育を行う事は可能ですが、サンゴの骨格形成に必要なカルシウム不足が水槽内に発生しないよう、カルシウムリアクターを設置した方がおすすめです。
コレクション
ナガレハナサンゴは、定番のグリーン以外にも、イエロー、オレンジ、ブラウン、軸グリーン、ゴールドなど様々な種類があり、コレクション性が高いハードコーラルです。様々な色合いのナガレハナサンゴを飼育し、長期維持すると、とても綺麗なリーフタンクが形成されます。
小型水槽での飼育
ナガレハナサンゴは小型水槽でも飼育する事は可能です。オーバーフロー水槽では無く、外部濾過水槽を利用して、長期飼育しているアクアリストも中にはいます。外掛け式の水槽でも飼育は可能かと思いますが、水槽が小さいと環境の変化が起きやすいため、できるだけ水量が多く確保できるオーバーフロー水槽の方が、飼育には適した環境です。
産卵
ナガレハナサンゴは、飼育環境下で産卵する事が確認されています。ツツウミヅタも水槽環境下で産卵をしたことがあるのですが、果たして本当に産卵なのか?真意は不明です。ただし確かに白くて丸い卵のようなモノを放出する事は肉眼で確認しています。
毒性

スイーパー触手を伸ばすブランチタイプのナガレハナサンゴ
通常の触手であればそれほど毒性の強さは感じられません。ただし気を付けないといけないのがスイーパー触手を伸ばした時です。ナガレハナなどのチョウジガイ科のハードコーラルは、近くにサンゴがあるとスイーパー触手を伸ばしてサンゴを攻撃します。
スイーパー触手
こちらは2009年に自宅の水槽内で撮影したスイーパー触手です。通常の触手よりも長い触手がある事が確認できるかと思います。このスイーパー触手は、思いのほか長く伸びるので、ナガレハナサンゴの周辺に、他のハードコーラルや、ソフトコーラルを配置しないように気をつける必要があります。同種のナガレハナサンゴや、チョウジガイ系のタコアシサンゴが触れる分には特に問題ありません。ハナサンゴ(ツツマルサンゴ)については、チョウジガイ科のサンゴの仲間の中でもデリケートな感じがするので、私はあまりナガレハナとハナヤサイサンゴが触れ合わないようにレイアウトするように心がけています。
開き
ナガレハナサンゴは、思いのほか広がるサンゴです。広がるのとあわせてスイーパー触手を伸ばすので、他のサンゴと触れ合わないようにレイアウト配置してあげる必要があります。
ストロンチウムの添加
よくストロンチウムが必要だという事を見るのですが、ストロンチウムを水槽に添加した事は一度もありません。添加した場合に、その添加量が果たして本当に正しいのか不明なのと、高級魚が泳ぐ水槽に添加剤を入れると、海水魚に影響が出ないのか?という点も未だよく分かっていません。過去に添加剤を水槽に入れた後、ブラックバンドエンゼルが調子を崩してしまい死んでしまった事があります。スプラッシュでも、添加剤は一度も利用したことが無いと言っていました。もしも水槽内に添加剤を入れるのであれば、シッカリと不足している分を計測し、必要量を添加できるコーラルラボで取り扱っているトリトンシステムが添加剤としては適しているように感じます。
水質
どのような生体であっても、水質の急激な変化は好ましくありません。飼育を行う際には、浄水器で純水を生成し、人工海水で飼育水を生成するのがおすすめです。またサンゴ飼育の場合は、比重計では無く、塩分濃度計を利用した方が正しい計測ができます。
水深
水面ギリギリにナガレハナサンゴをレイアウトするのは好ましくありません。また小型の水槽にコロニータイプの大型のナガレハナを入れて飼育するのも好ましくないです。理想は、45cm、60cm水槽に10cm~20cmサイズのナガレハナサンゴ全体に水槽内の水流があたるような配置でレイアウトしてあげる事です。
水温
水温については、25℃を維持するようにします。夏場は水槽用クーラー、冬場はヒーターを設置し、25℃の温度管理をシッカリするように心がけます。
食害
水槽飼育環境下において、ナガレハナサンゴを食害する生体はいません。ただし気を付けないといけないのは、キャメルシュリンプです。キャメルシュリンプはポリプを食べるというよりも、ポリプをむしり取ってしまいます。仕事から帰ってきて水槽を見たら、ナガレハナサンゴの触手が水槽内を舞っていて、ほぼ骨格だけになってしまったナガレハナサンゴの上に、キャメルシュリンプが乗っかっていたことがあります。キャメルシュリンプとは、以下のエビです。スカンクシュリンプや、ホワイトソックスといったエビの場合は、ナガレハナサンゴが配置された水槽下であっても、悪さをする事はありません。
相性
ハタゴイソギンチャク
ハタゴイソギンチャクの触手の毒はとても強いです。ナガレハナサンゴのスイーパー触手の毒も強いですが、ナガレハナサンゴに限らず、どのようなサンゴであってもハタゴイソギンチャクを触れるようなレイアウトは避けた方が望ましいです。
クマノミ
カクレクマノミとの相性は特に問題はありません。水槽内にイソギンチャクが無い時は、カクレクマノミがナガレハナサンゴに体を摺り寄せる姿を確認する事ができます。カクレクマノミはナガレハナサンゴに限らず、水槽内にイソギンチャクが無い場合は、マメスナギンチャクやウミキノコのポリプにも共生っというか、体を摺り寄せます。
種類

パープルとグリーンが混ざるツートンタイプのナガレハナサンゴ
タイプによる違い
ナガレハナサンゴの形状は、大きく分けてブランチとコロニーに分かれます。
ブランチ
ブランチとは、ナガレハナサンゴの骨格が枝状に分かれた個体です。
コロニー
コロニーとは、ナガレハナの骨格が枝状では無く、骨格が一つの塊となった形状の個体です。
カラーによる違い

オーストラリア産の軸グリーンなナガレハナサンゴ
イエロー

ナガレハナサンゴのイエロー個体
イエローはインドネシア便でよく見かけます。私が飼育しているナガレハナイソギンチャクの中には、以下の写真のようなクリームイエローな個体がいます。
オレンジ

ナガレハナサンゴのオレンジ個体
オレンジ色が濃いナガレハナサンゴは、オーストラリア便の方が多い気がします。オーストラリア産のナガレハナサンゴは、インドネシア産のナガレハナサンゴよりもポリプが大きくシッカリとした形状なのが特徴です。ダーウィン産のナガレハナサンゴも色合いが美しく綺麗な個体が多いです。
ゴールド
ゴールド個体は、イエローやオレンジ色に近い色合いの個体ですが、メタリック調の色合いがあるのが特徴です。実際に入荷時にゴールドなナガレハナサンゴを見かける事もありますが、イエローやオレンジといった個体を水槽内で色上がって、ゴールド個体へと変化していく場合があります。
スーパーメタリックグリーン
ナガレハナサンゴは、グリーンの個体が多いですが、なかでもメタリックな色合いが強い個体が稀に入荷する事があります。メタリックグリーンが強い個体は、明らかに通常のグリーン個体とは色合いが異なります。
軸グリーン
軸グリーンも人気のナガレハナです。ポリプはピンクっぽいパープル色なのに対して、ポリプの軸がグリーンに輝くのが特徴です。特に軸グリーンで軸のグリーンがメタリックに輝く個体はとても綺麗です。
飼育難易度
ナガレハナサンゴは飼育が簡単なサンゴではありません。私の知り合いのアクアリストで、ナガレハナサンゴを長期飼育できている人は、わずかしかいません。ただ飼育すると分かるのですが、チョウジガイ科の中では飼育は簡単な方に感じます。特に私はコロニー型よりもブランチ型のナガレハナサンゴの方が飼育しやすいです。っといってもこれは感覚値にすぎないので、飼育難易度を語る前に、飼育環境を適切に整える方が先決な事だと思います。
難易度
普通:
光量
普通:
毒性
強い:
飼育環境
水換え頻度
飼育する水槽環境によって、水換えを行う頻度が異なってきます。水換え頻度については、以下のページでまとめています。
水換え頻度について
ライブロック
ライブロックは、水槽内での生物濾過を実現したり、珊瑚のレイアウトとして便利なため、水槽内にあった方がおすすめです。
ライブロックの特徴、選定
ライブサンド
ライブサンドは、水槽内での生物濾過を実現し、生体が水槽内で過ごし易い環境を作り上げることができます。ライブサンドの特徴や、水槽サイズ別に必要となるライブサンドの量について、以下のページでまとめています。
ライブロックの特徴、選定
プロテインスキマーの設置
プロテインスキマーは、ライブロック、ライブサンドで実現する生物濾過とは異なり、水槽内に溜まった目に見えるぐらいの汚れを物理的に除去するといった役割を持つため、設置した方が状態よく飼育することができます。
プロテインスキマーの特徴、選定
浄水器の設置
より海に近い環境で長期飼育を目指す場合には、水道水の不純物を取り除ける浄水器を設置するのがおすすめです。浄水器の特徴や選定については、以下のページでまとめています。
浄水器の特徴、選定
オーバーフロー水槽での飼育
水槽の水量が多いほど、急激な水槽内の環境変化から生体をまもり、状態よく飼育することができます。生体の長期飼育を目指すなら、オーバーフロー水槽での飼育がおすすめです。
オーバーフロー水槽の特徴、選定
ナガレハナサンゴを飼育する上で必要な飼育環境については、以下のページにまとめています。
実際の飼育環境
本ページで記載している記事は、以下の水槽スペックで実際に飼育した経験を元に記載しています。飼育環境を選定する際の参考情報としてください。
価格
価格はサイズや産地などにもよりますが、インドネシア産であれば一万円前後。オーストラリア産だと二万円前後といった相場感です。ネット通販では、小型にカットされたフラグ個体なども販売されており、価格は2,000円~3,000円といった個体も流通します。詳しくは以下の通販サイトより、最新の価格をご確認ください。
通販
通販サイトで購入ができる価格が安いナガレハナサンゴを以下のページからご確認いただけます。該当の商品が存在しない場合は、商品が何も表示されない場合や、他の商品が表示される場合があります。
ナガレハナサンゴに関する飼育方法のご紹介は以上となります。次にミドリイシの飼育方法をご紹介いたします。 関連記事:ミドリイシの飼育について
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ハードコーラルの飼育
ハードコーラルは、ポリプが短いSPS(Small Polyp Stony)とポリプが長いLPS(Large Polyp Stony)に分類されます。SPSの代表的な珊瑚がミドリイシとなります。LPSとSPSを比較した場合、飼育が簡単とされる種類はLPSの仲間になります。SPSの中でもミドリイシを状態よく維持、成長させるためには、飼育経験と専門的な知識が必要です。ハードコーラルの仲間には毒性が強い種類が多く、水槽内で珊瑚をレイアウトする際には、珊瑚同士が接触したり、イソギンチャクが近づきすぎたりしないように注意する必要があります。また、ハードコーラルは硬い骨格を持つのが特徴なため、水槽内にカルシウムを必要とします。水槽内にカルシウムを補充する際には、添加剤もしくはカルシウムリアクターを利用して補充していきます。また特にミドリイシを飼育する際には、水道水に含まれる不純物を限りなく取り除いた状態で飼育用の海水を作る必要があるため、浄水器の設置は必須となってきます。以下のページでは、ハードコーラルの種類別に飼育方法についてご紹介していきます。
珊瑚の飼育機材、用品
珊瑚は、ソフトコーラルとハードコーラルの2種類に大きく分かれます。更にハードコーラルは、ポリプが短いSPS(Small Polyp Stony)とポリプが長いLPS(Large Polyp Stony)に分類されます。SPSの代表的な珊瑚がミドリイシとなります。珊瑚は、海水魚よりもデリケートな固体が多いので、急激な環境変化にストレスを受けて死んでしまうケースが多くあります。珊瑚を飼育する場合には、生体が落ち着ける環境を作り、一旦レイアウトを行ったら、いじらないことがとても大切だったりもします。
珊瑚飼育におすすめのオーバーフロー水槽
珊瑚飼育におすすめなオーバーフロー水槽を30センチ、45センチ、60センチ、90センチ、120センチサイズ別に比較することができます。オーバーフロー水槽は、サイズが大きくなるにつれて、とても高額になってきます。オーバーフロー水槽が崩壊したり、水槽に付属する機材が故障すると、飼育している海水魚、珊瑚、イソギンチャク、マリンプランツが死んでしまう可能性があるので、万が一何かトラブルが発生した際にも、サポート体制がシッカリとしている店舗で購入するのがおすすめです。インターネット通販で販売されているオーバーフロー水槽は、組み立てが簡単なので、届いたその日に水槽のセッティングを開始することができます。詳細は、以下のページでまとめています。
マリンアクアリウム飼育方法
海水魚、珊瑚(ソフトコーラル、ハードコーラル)、イソギンチャク、マリンプランツ(海藻、海草)の飼育方法について、以下のページでそれぞれまとめています。
マリンアクアリウム飼育機材
海水魚、珊瑚(ソフトコーラル、ハードコーラル)、イソギンチャク、マリンプランツ(海藻、海草)の飼育に必要な機材や用品などについて、以下のページでそれぞれまとめています。